*この感想は[さたける]さんに書いて頂きました。

閉鎖された3D空間を動くインタラクティブ性と圧倒的な音響で視覚・聴覚を揺さぶる快作


科学ADVと聞くと、カオスヘッドやシュタインズゲートなどの5pb制アドベンチャーが有名です。また、それらが出てくる前はRemember11、Ever17などのインフィニティシリーズが絶大的な人気を持っていました。インフィニティシリーズのシナリオを担当した打越 鋼太郎氏は現在もZERO ESCAPEなどの極限脱出シリーズを発売してこちらも好評価を得ています。

ノナプルナインは、これらのゲームに反応できる読者なら間違いなく楽しめるであろう科学ADVです。脳科学、自然科学、宇宙物理学、遺伝子学などから珍しい実験を丁寧に紹介しながら、監禁されたラボから脱出を目指す物語は打越氏のシナリオにも通ずるサイエンスホラーのテイストを示しています。また、主観は観測者である事もインフィニティシリーズや極限脱出シリーズのオマージュっぽいですね。また、科学だけでなく、舞台である2036年の世界情勢、ラボに蔓延る怪物など緊迫感漂うシーンが満載です。

西暦2036年、一人の女性が街中で頭部が爆発して死亡。女性が勤務していた企業に人体実験の噂があり、関連性が疑われます。その中、主人公は同企業の記憶回復プログラムの被験体として企業内の一室で目覚めます。全裸、そして性的刺激を伴う回復プログラム、そしてわずかに記憶内した記憶の不振さからラボからの脱出を目指した被験体。そこは階段を昇降しても延々と32階が続く閉鎖された空間でした……。

プレイヤーは舞台となるラボで記憶喪失+全裸の少女(被験体)を操作して気になる場所をクリックして進めるポイントクリックADVです。被験体である(画面にいる)全裸少女、ドローンを通して少女に声をかける女性、そして観測者である(あなた)の3人がやりとりしつつ、被験体はラボから脱出するために行動をおこします。

やりとりを通して様々な事が判明していくのですが、うんちくの情報量が莫大で科学系の無駄知識がたまります。情報の出し方は予算の関係で絶対に企業では真似できない、同人だからこそ実現できたゲームです。過去の情報を伝える際は文字ではなく、例えばゲーム内PCからWEB記事のように作られたニュース記事を見せたり、うんちくを語る時は、絵図を動的に駆使したり、衝撃的な場面は実写を用いたり、さらにはアニメ動画風の宣伝記事を見せたり。その一つ一つがしっかり作られています。

web 説明
▲物事の説明にはオリジナル画像をたっぷり用意。しかも作者ならではのジョークも仕込んでおり例えばweb風画像、アクセスランキング4番目とかネタがいちいち面白い場合もあります。

ちなみに作者のジョークセンスは高等で、科学を散りばめながらも、言葉遊びで笑いを取り上げたりしてゲーム内を和ませてくれます。(私の経験則ですが、このような笑いをとれる方のストーリーは奥が深くて面白いです。)

そして、舞台の謎と考察は無数にあります。例えば冒頭で紹介した「観測者」。プレイヤー視点で画面から一切表示されず、たまに両手が画面に出てきて挙動を伝える程度の意思表示のみ。これが誰かは本作の一番のキーだと思っています。これがインフィニティシリーズのリスペクトだとすると観測者はゲーム内にいる人物ではなく神(あなた)の視点であり、それこそ(あなたが)歴史介入などもできる存在と考えてもおかしくありません。極端な例ですが、作中の観測者の重要性からこれぐらいのインパクトがある結末が本作製品版でも待っているでしょうね。

考察
▲衣服がないので裸で考察がデフォです。

それに合わせてこれは凄いぞと思ったのが音響周り。主人公の動作一つ一つに作り込まれた効果音をあて、サイエンスホラー系統の映画でかかりそうな音楽がバックグラウンドで響いています。また、音の出し方も効果的で無音かと思ったら、衝撃的な事実と合わせて恐怖を掻き立てる音楽が鳴り、新たな謎が出てきた時に、深層の闇に捕らわれたかのような迷いを感じる音楽が鳴ります。しかも音楽のクオリティが高いので物語への没入感が高まります。(同人ゲーム作者さんは音楽の使い方などの勉強ができると思います。)

体験版の感想については軽いネタバレも含めて詳しくは111さんの感想をどうぞ

なお、少し補足すると体験版ではアンタゴニストから逃走する場面があるのですが、正直怖かったです。ただのADVから一転、ダメージがあり0になると行動不能になる仕様、別の部屋に移動しても襲ってくる敵……ライブアライブSF編の恐怖と言うとどのぐらいの方に通じるでしょうか。

謎の解き方と新たな謎を提供するアウトオブオーダー


本作は体験版、アウトオブオーダー(OOO)、製品版(未発売)の最低3作からなる連作短編形式です。OOOは外伝であり体験版の謎を補足する物語になっています。体験版をプレイする事が前提で作られています。

主人公は体験版と同じくノナプルナイン。体験版ではドローンを通してガイドとやり取りしつつラボを探検しますが、OOOは主人公と同じく被験体っぽい人物がドローンを通して主人公を導きます。主人公が記憶喪失、難読語句を間違えて読む、妙なところで鋭さを持つなど外見と性格的な面は本編同様です。なのでおそらく同一人物。アナウンサーがガイドではないので、ウンチクの量こそ少なくなっているものの、声とのやり取りは相変わらずの面白さがあります。

被験体2 被験体1
▲このやり取りを見て本編とOOOのノナプルナインは少なくとも同一の人格を持っていると理解しました。シリアスでサイエンスホラーな物語でも、こういうコミカルな一面を持っているが清涼剤に。

物語は大雑把に語ると3人の被験体がお互いの場所を把握できないまま、音声の送受信のみで合流して脱出しようとする話。そして、アンタゴニストが存在して危険なので扉を開けるなと書かれた紙。さて、3人は合流して脱出できるのでしょうか、それともガイドなどの妨害があるのでしょうか。前半は謎の解明に翻弄する様を、後半はグロありの極限状態に追い込まれた状態で物語は進行します。

エッチ
▲エッチは体験版と同じく、性的刺激を与える箇所をクリックして数値をあげつつ、規定値を越えたあとゲージを振り切ってフィニッシュ。(詳しい仕様は体験版感想をご覧ください)

まず、欠点を述べておくと、短いです。プレイ時間は体験版の6時間と比較してOOOは1時間30分ほど。いくつもの部屋を渡り歩いた体験版と異なり、OOOは目覚めた部屋と部屋手間の廊下の2エリアのみ。インタラクティブエロは3種。明らかに無料の体験版と比較してボリュームがありません。ただ、捕捉するならノベルとしての魅力は十分にあり、体験版同様に主人公は会話中によく動き、次々挿入されるクリップや写実CGは製品版と同等のクオリティを十分に保っています。体験版の無料と比較すると高価に感じますが、値段以上の価値はあります。

なお、どんな層に購入を勧めるかと言うと、謎解き・考察が好きな方です。「ひぐらしの鳴く頃に」や「うみねこの鳴く頃に」は1話で物語が完結するものの謎が多く残り、次話が発売するまで考察が活発になっていました。ネット上で謎を読んだり自分で考察するのが凄く楽しかった覚えがあります。ノナプルナインも同様に新たな作品が発売するたびに考察が進捗する1作品完結型では味わえない楽しみ方ができます。まあ、ひぐらし程の人気はないのでネット考察はかなり少ないのが残念な点ですが……。

ガイド
▲体験版で被験体に助言するガイドがいない代わりに、音声のみの被験体がガイドから色々と教えられた状態のようです。

プレイすると序盤の時点で謎が2つ。本編と同一人物らしき被験体。これはパラレル(恋愛ADVのルート分岐みたいなもの)なのか同一世界線上の話なのか。主人公(あなた)は観測しているものの、ガイドが登場しないのはどうしてか。これは2つともOOO内で解決する謎です。これ以降は本編に起因しそうな謎も提示され、ますます考察し甲斐のある内容となっています。

まぁ、このゲームの場合、ゲームが前衛的で、体験してみないと文字だけでは凄さが伝わらないゲームです。なので体験版は是非ともプレイして欲しいゲームですね。本編の前編が収録されていてボリュームたっぷりである事もポイント。もし体験版が気に入って、もっと謎に迫りたい方はOOOの購入を検討してみてはいかがでしょうか。