サマンサのドキドキトレジャーハンティング (製品版)

R15,ACT製品版の感想,ライター:エローン大君

*この感想は [エローン大君]さんに書いて頂きました。

トレジャーハンティングだって、大変なんです。体験版で全部遊べちゃうアクションゲーム

※記事下部に記載された、エローン大君のスコアと対決してみよう!
※好成績を残せたら、コメント欄や本記事執筆者「エローン大君」のTwitterに連絡して勝ち誇ってください。
※勝っても特にプレゼント等はありません。

袋持った2人(敵がいる面)
▲2人揃ってトレジャーハント。行きはよいよい帰りはこわい。

やり込むと、頭脳も指スキルも重要なガチゲーです。
SMGホルモンXさんの、「サマンサのドキドキトレジャーハンティング」を紹介します。
本作は、以前ご紹介いたしました「金字塔と冥府の王」のスピンオフ作品。
ステージ中に配置された宝物を全部回収してステージ脱出を目指す、ジャンプアクションとドットイート要素を組み合わせた固定画面型アクションゲーム。
ゴリ押しクリアもできるけど、スコアアタックを始めると考え抜かれたレベルデザインに、レトロゲーマー魂に火を付けられるゲームとなっております。
ちなみに、こちらは実はかなり特殊な販売方法を採っている作品。そこも含めましてご紹介したいと思います。
何しろ本作、体験版で全ステージがプレイ出来る作品なのですから。

性能の違う姉弟を使いこなせ!欲をかくと死んじゃう!?奥の深いゲーム性に注目

オープニングデモ
▲ドナの後ろにしれっといる、サマンサ・サミュエル姉弟

本作は、私が以前感想を書かせて頂いた「金字塔と冥府の王」のスピンオフ作品。
「金字塔と冥府の王」のデモ中に、ドナは巨大ミイラに追われることとなっておりました。
その際、見事なまでに巻き添えを食らった、本作の主人公・サマンサとサミュエルの姉弟。
本作では、巨大ミイラを目撃してドナと共に逃げ出すまでにやっていた、宝探しの場面を描いております。

1面クリア
▲たくさんのお宝を持って脱出中

ゲーム内容としては、ステージ内に配置された宝物を手に入れて、画面右にあるゴンドラに運搬。
積み込める宝物が無くなった状態で、姉弟揃ってゴンドラで乗り、画面外に脱出できればクリアです。
敵やトラップでダメージを食らうと、手に入れた宝物を手放してしまいます。
その代わりに命は免れるため、ダメージ時の無敵時間を利用してごり押しクリアも可能です。
このミス周りのルールは、前作「金字塔と冥府の王」と同じ。
それながら、プレイ中に自然と宝物が集まる前作と比べ、本作は「宝物集め」がテーマなので要求されるスキルは高めとなっております。

ゲーム画面
▲ルールはシンプルながら頭を使う固定画面型アクションゲーム

また、「宝物を持っている間は攻撃が出来なかったり、移動速度などが制限される」というフィーチャーも存在。
なので、姉弟の使い分けや宝物を取る順番など、効率的・安全にクリアする方法を考えるのが楽しく、前作と同じ遺跡という舞台ながらも全く異なったゲーム性となっています。
ステージ数は現状で全30。一度クリアした面は、ステージセレクトして遊ぶことが可能です。
これから先、ステージ数が増えるかは不明ですが、30面の段階でも私が全面クリアするまで5時間かかりましたので、プレイボリュームはたっぷりだったり。
ちなみに、「金字塔と冥府の王」は難易度が低い作品でしたが、本作は結構高難易度なゲーム。
ミス条件を使ったゴリ押しや、後述するスコアアタックでの各要素など、「どういうプレイを狙うか」に応じて難易度調整はプレイヤー側で出来るので、奮ってプレイしましょう。

攻略の鍵は姉弟の性能差。スコアアタックは本気で熱い!

本作のキモとなるのは、「姉妹を操作する」という点と、「スコアを稼ぐためには宝物を運搬しないといけない」という点。
ゲーム中は「キャラチェンジボタン」で切り替えて、トレジャーハンティングをしていくことになることになります。

サミュエルジャンプ サマンサジャンプ
▲サミュエルではどうやっても届かないが、サマンサだとあっさり取れる宝物。姉弟には性能差があるので、使い分けが重要

まず、サマンサ(姉)とサミュエル(弟)には性能差がありまして、それぞれを使い分けないとクリアすることはできません。
具体的には、サマンサは「上へのジャンプ力が高い代わり、横へのジャンプ力が低い」、サミュエルはその逆の性能を持っております。
この性能さを活かすように、サミュエルでは届かない高さに宝物が配置されていたり、逆に距離の関係でサマンサでは超えられない足場があったりします。
細かいところでは、サミュエルの方が足が速かったり攻撃力が高かったりという差もありますが、ここはスコアアタック時に重要となってくる要素ですね。

サミュエルピンチ
▲宝探しに熱中していると、もう一人が敵に襲われてミスになることも

攻略時に問題となってくるのは、当たり前ですが「一度に操作できるのは、サマンサかサミュエルだけ」という点。
操作していないキャラはもちろん完全に無防備で、「ゴンドラの上に敵キャラが乗ってきて、無防備な相方がやられてしまう」という事態が起こったり。
ステージ中に配置された「ロープ」は、上手く使えばほとんどの敵キャラの攻撃が届かない安全圏。
ですが、ロープに掴まっている状態では、キャラチェンジが出来ないという仕様となっております。
無防備の相方がピンチでキャラチェンジしたい時も、「敵がいるけどすぐには襲ってこない」など比較的安全な場所に操作キャラを移動させることが必要。
「キャラチェンジにも一定のリスクがある」という面白いシステムになっております。
もちろん、操作キャラがギミックや敵の位置の関係で動けない、という事態も出てきます。
その間に相方にチェンジして、ゴンドラを動かしたり、他の宝石を回収したり、助けに行ったり。様々な行動を取ることが攻略の鍵となることでしょう。

袋パンパン
▲袋がパンパンになると、ビックリするほど機動力が落ちる。サミュエルのジャンプ力は特に悲惨なことに……。

もう一つ、「スコアを稼ぐために宝物の運搬をしないといけない」のも重要なシステム。
宝物を入手すると、「攻撃ができなくなる」「足が遅くなる」「ジャンプ力が低くなる」という3つのデメリットが出てきて、一度に取れば取るほどデメリットは強化。
そのため、全ての宝物をゴンドラまで安全に運ぶためにはどうすればいいか。そして、どのような順番で宝物を取れば効率的かが問われます。
持った宝物に関しては、ゴンドラの上で降ろすことができますが、ゴンドラに宝物を置いたとしても安心はできません。
ゴンドラに敵キャラが乗ると、集めた宝物を奪取されたりするので、ゴンドラ近くの敵の動きにも要注意だ!
宝物を持っている際、敵キャラが立ちふさがっている場合は、相方が助けにいけばいいのですが、「ジャンプ力が足りなくて超えられないトゲ」に関しては対処は不可能。
そうならないように、「一度の運搬でどこまで欲張るか」という面も含めて、きちんとパターンを組まなければならない。そんなパズルゲーム的な面も多分に含まれているゲームです。
ちなみに、救助に行く際は「攻撃が出来るように宝物を一個も取ってはいけない」ため、救助する相方は「一発でもダメージを食らえばミス」になる点もなかなかに悩ましいところ……。

ステージクリア画面
▲ゲームオーバーになったらスコアリセットなので、スコアアタックでは命を大事に

やり込み要素としては、スコアアタックがメイン。
本作の初期状態のハイスコアは3万点なのですが、これは実は意外と高いハードル。
1面につき3000点前後しか入手できない上、ゲームオーバーになったら点数はリセットされるため、死なないようにしつつ稼いでいく必要があります。
ステージクリア時には、取得した宝物の数・残機数・残りタイムがスコアとして計算される仕様。
宝物数と残りタイムはスコア中に割と大きな割合を占めるため、「宝物を安全に運搬しつつも、スピーディーにクリアしていく」ことが求められます。
残りタイムでのボーナスを無視して、残機や宝物を守りつつ進むことも可能ですが、ステージは進む度に高難易度化。
逆に「宝物があればミスにならない」仕様を利用して、ゴリ押しで進もうとすると取得宝物の数が少なくなり、最終的なスコアはどうしても下がってしまう。
どのリスクをとって、どのリターンをとるか。完璧なルーチンを作るまでは、かなりの試行錯誤を必要とすることでしょう。
ゴンドラの操作ミスで、露骨なタイムロスを出してしまうと「ウギャアアア」と悔しい気持ちになることも。
こういう悔しい気持ちがモチベーションとなり、タイムロスにまつわる試行錯誤へと繋がっていくので、リプレイ性はかなり高いです。
一部面では、ゴンドラに乗るだけでもテクニックが必要だったりと、結構面白いレベルデザインをしている作品だったりします。

19面
▲すごく難しい19面。ここのトラップは見た目以上にシビア。

難点としては、当たり判定の関係で、かなりシビアなアクションが求められる面があるというところ。
ほぼ一人分の隙間しか無いトラップの間を抜けていく19面は、「頭よりも足元の方が当たり判定が強い」っぽいところが妙に難易度を上げていたりします。
他にも様々なトラップが仕掛けられた鬼門面なので、スコアアタックの際は気をつけるのだ。

海外先行発表、日本版のみお色気要素が追加!?興味深い販売方法

本作の興味深い点としては、販売方法を2つ用意しているところ。
実は本作、海外で先行配布されていた作品でありまして、それにお色気エロを追加したものがDLsite.comで販売している作品でございます。

海外版1面 日本版1面
▲左が海外版、右が日本版。デモ以外は同内容なので説明文が英語ですが、遊べば分かる簡単ルール。日本版でも体験版で全ステージ遊べます。

先行となった海外版では、「PWYW(pay what you want)」方式を採用。
こちらは、「itch.io」というサイトを使っての配布で、いわゆる「○ドル払うかは自分で決めてね」という方式です。
数年前の話になりますが、ロックバンドの「Radiohead」が新作アルバムを同じ方式で配布して話題になっていたり。
もちろん、無料でもダウンロード可能ですが、お布施として高いお金を支払うことも可能。
要するに、「ゲームの価値を見て、気に入ってくれたら好きなだけお金を払ってくれたら嬉しいな」というシステムです。

日本お色気デモ 日本お色気デモ2
▲ボタン連打で服を頑張って脱がすのだ!ちなみにサミュエル(弟)も一肌脱ぐぞ!

一方、日本版に関しては、体験版無料・価格固定のフリーミアムモデルを採用。
というより、PWYW方式のように少額決済ができて、ゲームを配布できるサイト自体が現状日本には無いため、このような形を取ったのかもしれません(※ウィッシュリスト文化があるとは言え、米国などにある寄付文化があまり根付いてないのも一因?)
その代わり、デモが4つ追加されておりまして、そのうち3つがサマンサ&ドナ&クレオパトラ(?)によるお色気デモとなっております。
あくまでお色気でありますので、本作は「R-15作品」。ブレイクタイム画面でボタンを連打すると……?
デモが追加されたとは言え、500円としての付加価値は少なめ。ただ、ゲームとしてはリスク&リターンが悩ましい非常に面白い作品なので、お布施として購入するのはアリだと思います。
R-15なのでドエロいわけではありませんが、ゲームセンターの端っこに置かれた脱衣麻雀で、こっそりとHボタンを連打してたりした頃を思い出しました。なんかノスタルジックでいいよね……。あとクレオパトラ(?)がナチュラルに罵ってくるのもいい……。
実際のところ、PWYW方式は知名度が低いとそもそも気付かれなくて儲からないですし、フリーミアムモデルもそれに見合う付加価値を付けないと売れません。
(フリーミアムモデルに関しては、「ゆきゆきてモンスター軍」が、プロモーションも含めても凄いなぁと思う成功例)
ですが、海外へのプロモーションルートさえどうにか確保出来れば、ミニゲーム的な作品などでもPWYW方式でも収益化できるかも、というのは非常に興味深い話だと思います。
「お色気要素興味無いし、500円まではいかないけどちょっとお布施したいな」という方や、「面白かった!次回作にも期待だ!1000円でも2000円でも出すぞ!」という方は、itch.ioでの配布ページからお布施しましょう。
ちなみに、「itch.io」への登録方法に関しても、作者さんのブログで解説されておりますので、興味のある方はチェックしてみましょう。
パズル要素のあるアクションなので、更に付加価値を付けるならマップエディット要素ぐらいでしょうか……。
あと、後半面は素で難易度が高いので、攻略本売ったらプレイヤーは買うと思うの。

君はどこまでやり込めるか!ゲーム面でも販売面でも、色々と挑戦的な作品

ゲームオーバー画面
▲ちなみに今回ぶっつけ本番でプレイした際のスコアは28690点(ハイスコアは4万超えてるんだけどな……)体験版で全ステージ遊べますので、是非挑戦を。

というわけで、「サマンサのドキドキハンティング」の紹介でした。
ゲーム面では、高難易度な後半面を含む、全ステージを乗り越えた後のスコアアタックがかなり熱い一作。
作者さんの初期設定ハイスコアの3万点を超えるようとすると、よりゲームの奥深さが分かって楽しめる作品だと言えるでしょう。
そして、ビジネス面でも「PWYW方式」「フリーミアム」と面白い試みを行っている作品でございました。
様々な意味で試金石と言える本作。今後の流れも含めまして、要注目な一作です。
全ステージクリアまで頑張った上でエンディングを見ると、どことなく切ない気持ちになるのは何故だろう……。
あと、サミュエルが「金字塔と冥府の王」の某デモで掘られたっぽい描写があるのも、何となく分かった気がした(サミュエルのデモシーンを見ながら)。