星屑 (製品版)

RPG,R18製品版の感想,ライター:さたける,星屑

星屑
星屑[RPGつくり隊]

*この感想は [さたける]さんに書いて頂きました。

異世界 + 知識系俺Tueee = なろう系小説のRPG化

過去に現代日本から召喚された勇者と魔王が争った世界。その後、召喚の反動で百年に一度の割合で地球から人間が落ちてきます。日本の平サラリーマンである主人公が、その世界に落ち、薬草士の少女に拾われ物語が始まります。日本人の影響で、ファンタジーながら19世紀レベルの文明度があります。また、中盤に登場する日本人が治めるある国は自動車が走り会社で働き時間に追われるような日本と変わらないような生活習慣。
召喚勇者のキーワードで想像できますが、「小説家になろう」異世界召喚系作品の系列のノリです。主人公は、物事に対して様々な推理を重ねます。知識や情報整理力はあり。冷静的な面もあるが、情報に惑わされて勘違いする事もよくあります。なので王女様の国家運営的な悩み、ある企業の経済的な悩みなどを主人公の現代知識で解決!みたいな知識系俺Tueeee! な展開もよく見かけます。強いのは知識で戦闘などは普通なので苦難の連続ですが。

主人公2 主人公1

作者は経済・政治・科学的な知識が豊富なため、それらをしっかり世界観や物語に絡めています。明らかに共産主義を意識した国や(日本みたいに)不況に悩まされる国、過去は大国だった帝国など。そして各国首都以外に帝国だと温泉街や油田など帝国特産とも言える村・街を配置するなど。各町の個性が出ています。

科学用語 政治3

地球人 産業
▲作者の知識とファンタジー世界を融合した用語や文化が混在した世界。物語中は政治・科学だけでなくビジネスマナーや経済なども含めた「うんちく語り」が散りばめられています。
また、長編RPGであり、物語重視である事も特徴です。ヒロインやサブヒロインと交流しつつ世界を冒険しながら絆を深める過程の前半があり、後半は寝取られていく過程を丁寧に描いています。寝取られ系物語最大のジレンマは主人公とヒロインが恋人である事を前フリでプレイヤーに意識させるのが重要で且つ難しい要素ですが、RPGを楽しみながらヒロインに感情移入できる点は素晴らしいなと感じました。
戦闘は横視点。特殊なシステムとしては合成技があり、2人が同時に攻撃します。シンボルの数が多いのでダンジョンの戦闘回数はかなり多め。その分、経験値が抑えられているので、レベルを上げるには相当数の戦闘をこなす必要があります。レベルが適正なら戦闘難易度は優しめかな。

ダンジョン 合成技

前半はヒロイン・サブヒロインと絆を深める恋愛RPG

ヒロインの村はある出来事により一瞬で滅びてしまいます。主人公は元の世界に戻るため、ヒロインは村を滅ぼした元凶を見つけるため旅に出ます。村が滅びた事で負ったヒロインの心の傷はひどく突然の鬱症状なども。主人公が支える事により少しずつ回復していきます。

日常1 日常2 日常3
▲鬱展開ばかりでなく、ヒロインの可愛らしさが感じられる一面も

また、サブヒロインとして勝気で元気一杯な元盗賊の少女が仲間になります。主人公とは喧嘩友達のような関係に、ヒロインとは友情を育んでいきます。主人公への好感度はヒロインと同様に上昇しているようですが、ヒロインのために一歩引いた付き合いを。

サブヒロイン サブヒロイ2
▲ヒロイン同様、悲劇的な設定とトラウマを持っています。

ゲストが仲間になる事もありますが、前半は基本3人パーティーで世界各地を回ります。街ではスターオーシャンのプライベートアクションならぬ自由行動(パーティー解散)が行え、各町々でメンバーに話しかけるとイベントが発生します。ある街だとキャラが悩みを叫んだり、ある街だと学校で勉強していたり。主人公がサブヒロインを叱ったり、ヒロインを励ましたり。

プライベート

船入手以降はメインイベを無視して世界のほとんどを回れるので、サブイベ探したり世界を堪能したりなど自由度が高いRPGを楽しめます。3人がだんだんと仲良くなる流れがしっかり描かれています。そして、冒険中に主人公とヒロインは惹かれていき、前半のラストにとうとうプロポーズを。
他、状況に合わせてモン娘やサキュバス、ある任務を帯びた女の子達などが旅の先々に登場して誘惑してきます。ほぼサブイベで回避可能ですが、中盤以降にエッチ(浮気)するとヒロインが……。

スライム セース 春

2人の男性の間で揺れ動く恋愛感情の結末はいかに?

物語は中盤で局面を迎えます。ある出来事で主人公とヒロインはお互いの生死が不明状態で別離してしまいます。ここからはお互いがどれぐらい思いあっているか。プレイヤーが主人公を操作しながらヒロイン捜索+魔王の弱体化イベントを行いながら平行してヒロイン視点でも物語が始まります。
主人公はサブヒロインと一緒に行動、しかし身体の関係を持ったり心を縮めるには後ろめたさが……。この葛藤と共に旅を続けます。
一方、ヒロインが辿り着いたのは、現代日本に近い文明レベルの国家、そこでの今までのファンタジーとは全く異なる新生活、慣れない出社や文明社会、公害による咳、ブラック企業のストレスマッハな生活が始まります。そこでヒロインを助けるネトリ相手。将来を誓い合った主人公からだんだんと心が離れていく過程がゆっくりと進んでいきます。

無力感
▲抱き合っている場面を見てしまう主人公。この無力感

身体のネトラレではなく、心のネトラレから始まります。ネトリ相手は完璧超人(優しい・厳しい・かっこいい・イケメンなど)でヒロインに一途とまさに欠点の無いヒーロー。少しづつ仕事の上司として心を奪われ、プライベートでも心を奪われ、でも前彼の影響があるイベントもあり、ネトリ相手の素晴らしさを実感するイベントもありで、前彼の記憶が薄れてきます。でも罪悪感も募って…。

抱擁
▲ヒロインを愛してしまうネトリ男(ヒロイン側視点だと主人公の生死が不明なので間男とは呼べない状態)

物語全体の感想として、ヒロインの悲劇度がかなり高めです。序盤は故郷滅ぼされて、中盤は将来を誓い合った最愛の恋人と引き裂かれて、その後の慣れない環境での生活、そしてラスト手前衝撃の展開。主人公視点から見るとネトラレですが、ヒロイン視点から見ると苦難を共にした前彼と新しい生活を支えてくれる今彼の間で揺れ動く乙女心を描いた恋愛物語とも言えます。また、悪環境の中あがき続けるヒロインの成長・成功物語の側面もあります。(恋愛ドラマや女性向け恋愛小説に加え社長などの成功物語でありそうな展開)
ちなみにネトリ相手と身体の関係になるのを防ぎ、最後主人公と結ばれるグランドフィナーレを迎えるには相当な謎解きが必要です。たぶん攻略を見ないと無理なレベル。という事でベストエンディングを見る場合はこちら
なお、ネトリ相手がかっこ良かったので、個人的にはヒロインとネトリ相手が幸せになるエンドも欲しかったです。
回想はヒロイン10、サブヒロイン5、その他20近くの約35。基本CGは70枚ほど。1つのイベントに2,3枚の基本CGを使っています。テキストは女性側の会話が下ウィンドゥ、情景描写などは中ウィンドゥと使い分けています。エンディングはGood Badの2種、主人公は両エンド共幸せに。ただヒロインの結末はエンドの種類によって大きく変化します。クリア時間は20時間ほど(私は迷って30時間ぐらいかかりました。)
心をテーマにしたネトラレとしても興味深いゲームですが、2人の男性を好きになってしまった女の恋愛事情を描くRPGとしても面白い物語かと思います。