Ark Noir / 箱舟のノワール (製品版)

RPG, 一般向け製品版の感想, ライター:シカク

*この感想は [シカク]さんに書いて頂きました。

良ゲーとはいつも世間から評価されている訳では無く、意外な所にひっそりと佇んでいたりもする。
今回シカクがレビューした『Ark Noir / 箱舟のノワール』はそんなゲームの一つです。

あらすじ

海に沈みゆく大陸。人々は生き延びるために新大陸を目指し、二つの大型移民船に乗り込んだ。
その片側である黒い船ノワール。神話の箱舟になぞらえて命名された船だが、突如として沈没し始める。
絶望的な状況下で生き延びれるか、沈没事件の真相に辿り着けるか、出会う人々を助けられるか。
或いは謎と共に海に沈んでいくか。
それはあなたの幸運に掛かっている。

生死の掛かる極限状態を生き残るハードな世界観であり、パイプの通ったような枠のスキンやテーブルゲームのようなテキスト回しで触れる事が出来るのは、金属質で重厚な雰囲気です。もっと言えば操縦席や船内を思わせるデザイン。
今作の産みの親であるサークル、Amamori Lab様のHPを見ればゲーム制作への思い入れを垣間見ることが出来、「成る程、箱舟のノワールのようなゲームが生まれる訳だ」と納得するはず。

体験版だけでもその雰囲気に浸ることが出来ます。ゲームを起動して初めの画面でヴィジュアルに惹かれた方もいることでしょう。
その一方で重厚かつシリアスな雰囲気にコアユーザー向けなのかな? と敬遠した人も多いのではないでしょうか。手応えのある難易度や遊びのないシナリオ等ライト層向けでないことは確かです。
こうして見てみると、ツクール製やWOLF製のゲームというのはそれだけで一種の安心感があるのだ。今作との出会いで思わされたことですね。
ですが、ユーザーの一部が求めた個性的かつ面白いゲームというのはこう言ったゲームにこそあるのではないか———そこまでは考えすぎかも知れませんね。

さて、このゲームの魅力は見た目やヴィジュアルだけでないこと。細部にまで手を入れ込んで作られた快作であることがこのレビューで少しでも伝われば幸いです。

操作方法の利点を存分に活かす親切なUI

主な操作はマウスだけで行う事が出来ます。
例えばゲームを起動して最初の画面だったら、ゲームのモードが一覧で並んでいるのでカーソルを合わせてクリック。とても分かりやすい。
一部例外的なのはCtrlでテキスト早送りやEnterキーでも文章送りが出来るぐらいです。右クリックは左クリックと同じ動きをすることもあるので右クリックの癖がある人は気をつけて。

シンプルな操作な分、それ一つでどんな作用があるのか、不安が残りやすいかも知れません。
ですがそれも見た目で想定しやすくなっていたり、それでもカバー出来ない部分はオートヘルプという機能がついています。
これはゲームを進めている内に新しい要素に出会った場合、操作説明が出て来ると言う物です。この操作説明は最初から確認出来るHELP機能から呼び出されるもので、先にHELPを読んだ周到な方なら「この場面か」と腰を据えて状況に対応出来ますし、説明書読まない派の人ならば安心して事態に臨めます。

他にもカーソルを合わせるだけで詳細を確認出来たりとマウス操作メインであることを存分に活かしています。こういう所は基本的な事かも知れませんが、制作サイドとしてはユーザー側の視線を理解していなければ為せない事なので是非注目して欲しい所です。
筆者が操作する上で迷ったことは殆ど無かったのでゲーム慣れしている人ならばこの辺りで躓くことはないでしょう。
寧ろゲームに精通している人ならこのUIの良さを堪能して欲しい。

性能の違う3人の主人公を選び、箱舟から脱出しよう

ゲームを始めると最初に3人いる主人公の内1人を選ぶことになります。

箱舟ノワールに取材に来た新聞記者アルベルト。平均的な能力値。
記者として実直な彼はこの沈没事故になにか裏があるのでは、と勘ぐる。

箱舟ノワールの警備主任ブルーノ。Fortune(幸運)値が低いが指折りの戦闘力を持つ。
警備主任としてその責任を全うするべく箱舟ノワールの中を進む。

二大政党の一つパトリック・デュナンの娘カロリーヌ。戦闘は弱いがFortune値が高い。
不意の沈没事故に遭った彼女は生き残るため箱舟ノワールからの脱出を図る。

性能が違ったり、テキストが少し変わったり、果ては固有のエンディングが用意されていたりと大きな違いがあります。
箱舟ノワールの沈没事故の謎を完全に知るためにはこの3人の主人公でそれぞれのエンディングに辿り着く必要があるわけですね。
ダブルヒーローならぬトリプルヒーローと言った所でしょうか。
見た目通りの性能差なのでそこまで迷うこともないでしょう。特に拘りがなければゲームを始める毎に回しプレイをすることをオススメします。
筆者としては・・・戦闘においてブルーノ警備主任が頭一つ抜けて強いので行き詰まりを感じたらブルーノを選ぶと良いかも知れません。

ゲームが始まるとオープニングの後、船内を進んでいくことになります。ゲームの雰囲気にどっぷり浸かる為にもヘッドフォンを推奨したいところです。

沈没する船を進む。その途中の出会いの数々

ノンフィールドRPGのジャンルに属する今作の目的は沈没していく船ノワールから脱出することです。
ノワールは5つのフロアで構成されており第5フロアの最奥に脱出艇があります。そこまで辿り着ければ危機を脱したと言えるでしょう。
ゲームの主な流れと基本的なシステムを解説していきます。

上に載せました画像の真ん中に薄らと見える矢印。これをクリックすると前進します。
左上部の数字、これは現在のフロアの進行具合です。100まで前進すればフロアの最奥に辿り着いたことになります。どんどん進んでいきましょう。
但し後退は出来ません。道中何かに出会うことがあればその場で慎重な判断が求められるでしょう。自ずと一歩一歩の前進に緊張を感じます。

箱舟ノワールは多数の動物を輸送していたそうで、この沈没事故により檻は壊れ船内に獣が無数に彷徨っています。
それらの獣と遭遇することは絶対に避けられません。力に任せ排除するか、幸運をもって逃げるか、判断することになります。

獣と戦うのならば道具を使うことになります。素手で戦うことも出来ますが無謀でしょう。
船内を進んでいくと物資コンテナを見付けることがあります。箱舟ノワールは獣たちの鎮圧を想定してか武器や銃火器、治療薬等の道具が用意されています。
このコンテナから獣と戦うための道具を揃えることになります。コンテナはFortuneを支払うことで探ることが出来ます。
しかしこのコンテナ、種類こそある程度分けられているものの、杜撰な仕分けとなっており何が出て来るか分かりません。このコンテナが有益になるか無益に終わるかはプレイヤーの幸運に掛かっています。或いは欲しい道具のジャンルと違うと見切りを付けたのならコンテナを無視することも出来ます。

獣との戦いで負傷した身体は治療薬を用いて治すか、或いは時折休憩に適した部屋を見付けることがあります。Fortuneを支払うことで休むことが出来ますが、それは傷の深さとFortuneの残り、プレイヤーの判断に任されます。
次の休憩部屋は何時だろうか? この回復はFortuneを支払ってでも行うべきなのか? 回復は治療薬でも出来る……そうした先の展開の想像と葛藤をこのシステムが作り出しています。上手く極限状況を表現しています。

沈没船の被害に遭った乗員は主人公だけではなく、道中同じように沈没船に取り残された乗員に出会うことがあります。

プレイヤーよりも切迫した状況になっていることもあれば、警戒心からこちらに近寄らない者もいたりと様々です。
こうした乗員達はFortuneを対価に助けることが出来ます。或いはその状況に適した道具があり、助ける意思も備わっているのならば道具を用いても良いでしょう。
ですが、どんな手段を選ぼうがそれは本来プレイヤーが生き残る為の貴重な資源です。善意の果てが自身の破滅となっては本末転倒と言えるでしょう。
その為に見捨てる選択を取ること、それが最善な時もあるかも知れません。

こうした危機を排除したり、乗員を救うことでプレイヤーは経験値を蓄積していきそれが4つ貯まるとレベルアップします。レベルが上がるとボーナスカードとPerkと言う謂わばアビリティ、スキルに相応するものを獲得出来ます。

ボーナスカードとは
・HP全快
・Fortune最大値の半分回復
・攻撃力1増加
・防御力1増加
これら4つの内1つだけをその場で得ることが出来ます。但し、同じボーナスはゲーム中3回までしか貰えません。
HP全快ならばボーナスカードでの全快は3回しか利用出来ないと言う具合です。その為かこのボーナスカードは貰わないことも選択出来ます。選択の葛藤はレベルアップの時でも。

続いてPerk(パーク)の獲得です。こちらは前述の通りRPGで言う所のスキルの取得に値するものです。
Perkは単純なステータス強化から一定の条件で効果を発揮する特殊な物まで様々。
今作の戦闘は数値が1上がるだけで結果が大きく変わる仕様ですのでステータス強化だけでも効果が目に見えて現れます。
ボーナスカードも合わさりレベルアップがすごく嬉しい———とPerkそのものはとても頼もしいのですが、Perkの獲得に関しては別です。なかなか厄介な要素を持ち合わせています。

このPerk獲得、膨大な数の中から二つだけが候補として選出され、そのどちらか一方しか獲得出来ません。同じPerkが被ることはないものの、攻撃力が欲しいのに防御強化とFortune増加が並ぶということも儘あります。このゲームに置ける運要素の一つです。
幸い、Perk候補はFortuneを消費して変えることが出来ます。ですが候補の抽選に偏りがあるらしく3回連続で片側しか変わらなかった、という不幸も稀に起きます。

高望みすればあっと言う間にFortuneが枯渇、ケチったり妥協しすぎると折角のPaek獲得の機会を棒に振ることになる。ボーナスカードの獲得が先なのはFortuneをここにあてるという選択があるからでしょう。
随所随所で選択が悩ましい要素を入れ込んでいます。憎らしいゲームデザイン、ですがとても良いバランス調整です。

最後に度々名前だけ上がっているFortuneについて解説していきます。
Fortuneはその名の通り幸運であり、それを数値化した物。このゲームのありとあらゆる所で必要になる対価、そして今作に置ける重要なファクターです。システム解説の随所に出て来るということはそれだけ登場機会の多い要素ということですね。

例えば戦闘なら敵の行動を先読みする為の「直感」というシステムを使うのに消費します。
他にも物資コンテナから出て来る道具は傾向こそあれどランダムですが、Fortuneがあればある程探る回数を増やせるので良い道具を引き当てやすくなります。
このようにFortuneを使えば有利な状況を作りやすくなります。

ですが敵の行動を先読み出来ても対応する道具が無ければ意味が無い、コンテナを何回探っても望んだ道具が出ないことはやはりある。
———ということもあり、運が良いだけでは生き残れないという過酷さを表現しているのだろうか、とも思ったり。引き際の見極めは重要です。

それからFortuneはフロア内を10進む度にRegという値の分だけ回復します。あと一歩で回復出来るな、と思ったらそこで戦闘が始まって「直感」が使えず被害が大きくなる、タイミング悪く休憩ゾーンが出て来た、なんてこともあり一歩一歩を考えさせる要素の一つです。
Fortuneは回復させる機会はそれなりに多いが任意で出来る訳ではない、という絶妙な調整。

以上が今作の基本的なシステムです。長文になってしまいましたが、今作の優秀な説明書(HELP)をレビューとして読みやすく、及び理解しやすくするのにはこれだけの文章量が必要でした。
ここまで書くと複雑でシビアすぎるゲームシステムに思えてくるのですが、慣れてくると厳しさこそあれどシンプルには感じてきます。

これは情報が多いが導き出す行動は一つ、という行程がある為です。
慣れてくると多くの情報を処理することが出来るようになり、最適解を瞬時に導けるようになってきます。そしてそんなことが出来るようになっている自分に気付くことで「またやってやる」「次はこんな目標を設定しよう」と言う気にさせてくれます。
プレイヤー自身のレベルアップも嬉しい、と言うことですね。

次の項目からはシステムの更に深く踏み込んだ所を解説しながら今作の魅力の解説に入っていきます。

獣との戦闘

船内を進むと先述の通り獣と遭遇します。変わるBGMが臨戦態勢を演出し、より緊迫感を煽ります。
こちらが出来ることは探索中に集めた道具を用いて戦うか或いは逃げるか。
逃走にはFortuneを大量に消費します。なので基本的には排除することになるでしょう。

戦闘そのものは普通のRPGです。こちらが行動すれば敵も動く。
基本的にはこちらが先攻です。敵が行動する前に倒せば被弾を抑えられるのでダメージ計算が重要になります。
例外としてエンカウント時に敵が不意打ちをしてきたり防御行動或いは回避行動を行うことがあります。この場合だけ敵に出し抜かれてしまいます。防御、回避行動に関しては直感という敵の行動が分かるコマンドを駆使することで対応出来ますが、こちらはFortuneを1消費します。
また、この直感は使用する時にHPが1回復するという地味ながら大きな効果があり、ついつい使いたくなる代物。無駄遣いには注意を払わないといけません。

こちらが先制ということでとても重要なダメージ計算ですが、今作の計算式は
攻撃力−防御力=ダメージ(1ダメ保証)
というシンプルな計算式になっています。巷ではアルテリオス計算式とも呼ばれていますね。
この計算式、数値[1]が増減するだけで結果が大きく変わる計算式です。
シビアな戦闘を強要される今作においては助けでもあり残酷でもある式ですね。エンカウントするだけで詰みが確定する場面に出会うこともあるでしょう。

基本的に先制であること、シンプルなダメージ計算であること、敵の行動が分かる直感が使えること。
これらの仕様に加えて敵の行動への対処を理解していけば戦闘そのものは難しくありません。
しかしそれは潤沢な資源があればの話。

戦闘に用いる武器や防具、薬等は物資コンテナから引き当てる必要があり、それらは消耗品です。
前述の通り、物資コンテナは何時出るか分からない、傾向や法則はあるが何が出るかは分からないという運要素の強い代物。
敵や道具の知識があってもそれを活用出来るかどうかは得られた道具次第です。手に入った物でどうにかやりくりするしかありません。これもまた極限状況。
ですが限られた武器からダメージ計算ぴったりで敵を倒せた時の爽快感、Fortuneのやりくりを上手く実現出来た時の「自分ってすごくね?」という感覚はこのゲーム程のシビアさでなければ経験出来ない心地よさです。
長く悩んで後一歩かも知れない命を踏み締めていきましょう。

最後に、フロアの最奥にはボス敵が待ち構えています。
道中で出会う獣より数段強く、初見は先読みをしてみた結果その強さと攻撃に呆気に取られるかも知れません。

この獣を下さなければ先に進めない、死闘を演じてもまだまだ先の長さを思わせるフロア移動、と絶望を煽る立役者の一人です。
強敵に備えて道具を揃えましょう。幸いボスだけの特殊な能力等はなく、道中の獣と同じようには戦えます。決して勝てない相手ではない。

このように戦闘は不確定要素が少なく、考えた通りになりやすく調整されています。
その分、詰み状況も確定しやすく無駄な行動が多くなるほど死期が近くなります。
公式からもルールは明示されている、とあるとおりRPG慣れしている方は直ぐに上手な立ち回りを実現出来ることでしょう。

その出会いが命運を分かつ

沈没船をうろつく獣との戦闘だけでなく、乗員と出会うことがあるのは前述の通り。
警備員の一人、有名人、売店の店員と様々な人がおり、没個性がないのは良い所です。
そしてこの乗員たちも獣や物資コンテナ等のように何処で出会うか分からず、ゲーム中で初めて出会う時には大概何かしらの大きな対価を求めてきます。
彼らを助ける為にFortuneを大量に消費するか、或いは都合良く状況を打開する道具があるならそれを使っても助けることも出来ます。
ですが、乗員を救ってもこちらを直接的には助けてはくれません。なので消費を勿体なく思うのならさっさと見捨てることも出来ます。
ゲームの目的は生きて脱出すること。その為であれば見限ってしまうのも一つの手だということです。

見捨てた時のテキストがあっさりとした文章なのは非常に大きな評価点です。あっさりしたテキストでも見捨てた後味が悪かったので。救えるのに救わない選択をした時なんかは凹みますね。
もし今作の水準の高いテキストが見捨てた時の文章にまで力を発揮すれば見捨てる度にプレイヤーの気分が落ち込むこと請け合いでした。繰り返しプレイすることが前提なゲームバランスなだけに良い仕様だと断言出来ます。

助けた乗員とは時折、イベントが挟まることもあります。
どの乗員も中々どうして一癖二癖あり、探索中でも和みを与えてくれる乗員もいます。ですがやっぱり直接有益なことはしてくれない。
偶に困っている時もあり、道具を求めてくる人もいます。こちらはFortuneでは応えられないこともあり、少し難しめですね。
一応要望に応えずともなんとか出来ることもあるのでそこまで深くは考えなくとも良いかも知れません。

救ってもプレイヤーを助けてはくれない、救わなかった場合は後味が悪くなる、別に助けなくともゲームクリア自体は出来る、と書くと救助は悪い点ばかりに思えます。
では乗員を助ける意味はどこにあるのか。それはやり込みの為です。

RPGではお馴染みの実績、アーカイブという収集要素、そして分岐するエンディング、これらの殆どには乗員が関わっています。

実績に付いてはゲーム中、次のフロアに到達したり、乗員を助けるだけで入手出来るもの、特定のエンディングに到達する、と様々な条件がありますが、基本的にはエンディングを目指していけば解除出来ます。
ですが、そもそもエンディングに辿り着く事が初見では難しいゲームバランスです。そこで実績の特典を利用していくことになります。
その特典とはゲームを始める前に装備出来るPerkです。
Perkが心強いのは前述の通り。そしてそれを運要素無く、しかもゲーム開始前から獲得出来ると書けばどれだけ強力な要素なのかが分かると思います。
実際、特典Perkを厳選すればほぼ確実にゲームをクリア出来るぐらいには難易度を下げることが出来ます。

なのでゲーム攻略を本格的に始めるのならば、
実績の解放の為に助ける乗員を絞るプレイングを繰り返し、その間にもゲームに慣れて勘を養ったり知識を蓄える。
ある程度Perkが揃ったら乗員を全て助けるクリアを本気で目指す、と言ったやり方がスタンダードかと思われます。
やり込みに必ず応えてくれる仕様とも言え、このゲームを繰り返し遊ばせる工夫の一つですね。

アーカイブはこのゲームのバックグラウンドを深く知るのに必要で、それぞれが読み応えのあるテキストとなっています。

大航海時代を思わせる時代背景、激しい貧富の差と二大政党、
沈みゆく大陸と二つの箱舟「ブラン」と「ノワール」。
エンディングに辿り着くだけでは分からないことも書かれています。
ハードな世界観に作り込まれた背景は良くマッチしており、設定の破綻も見られなかったのでクォリティは十分です。本編と直接絡んでこない設定でも夢中で読んでしまいましたね。
手に入れた時に流し読みして、ゲームがある程度進んだ時にもう一度読む、という読み方を推奨します。

ですが結論は煙に巻かれているものや本編中で確認出来ない部分もあり、プレイヤーの考察、想像に任せる部分もありました。少し惜しいな、と思う所です。

これらアーカイブはプレイ中にも読むことが出来るので手に入れた瞬間読むことが出来ます。ですが思わず読み耽ってしまってゲームの緊張感を忘れてしまったりもしました。テキスト好きは注意。

それから、これは筆者の個人的な評価ですが、
乗員の一部にはそれぞれの主人公に対応した関係者が設定されています。部下であったり、仕事仲間であったり、親族であったりと。
その乗員とのイベントは汎用テキストから専用テキストになり、本編には無関係な主人公達の人間味を垣間見ることが出来ます。そうした変化が面白くあり、テキスト内容が主人公達の個性を知るのに丁度良いのも合わせて評価したい点です。
このゲームに置けるフレーバーテキストですね。今作を好きになった人はこうした部分も是非楽しんで欲しいです。ゲーム上では記録に残らない箇所、という点もちょっとした特別感を感じませんか?

こうしてゲームに慣れつつ、アーカイブを少しずつ解明していきながらもクリアを目指す、というのは本来大きなRPGでこそするものなのですが、
今作は小さな舞台ながらもシビアな難易度とアーカイブや実績の解除といったやり込み要素を絡めることによって実現しています。
RPGはじっくりと腰を据えてやるものだ、と言う人には充実した時間を提供してくれることでしょう。
今作を気に入った方は是非全キャラでクリアを目指してみてください。クリアだけならば特典Perkを集めることで難易度を劇的に下げることが出来ます。

総評

同人ゲームとして水準を十分クリアしており、その上でクリックしたりカーソルを合わせるだけで詳細が分かる等のマウス操作を存分に活かしたUI、オートヘルプ機能によるプレイヤーのバックアップとユーザビリティの高さは挙げればたくさん出て来る。
そして実はハードなゲーム性のイメージに反して意外なほど値段が安いというのは気付きにくい長所。

計算しやすい戦闘システム、いつ遭遇するか分からない敵、物資コンテナ、乗員との出会い等ファクターの一つ一つが関係性を持っており、それらの不和もゲームを一通りプレイしたところではありませんでした。
それらが相乗効果を及ぼし、行動の一つ一つに緊張感が伴うのは実際にサバイバルな状況に置かれたようでヘッドフォンと合わせてプレイすることでの臨場感が凄まじい。
ゲームが終わった後にふと現実に叩き戻されるような感覚がするのは間違いなくこの臨場感の及ぼす所である。

今作の評価点の一つは間違いなくこのシステム達を組み合わせたバランス調整の化学反応です。それらを分かってやっている。

アーカイブの内容はプレイヤーの想像や考察に任せる所が一部に見られるが、それ以外はゲームの世界観を潰すことがなく、興味深い内容も多くゲームを好きになった人なら読んで欲しい代物。
それでいて本編と直接は関係ないので読むことを強制されないのは良い点と言えるか。

ゲームの難易度は高いが、初見クリアが難しいという意味であり、知識を蓄えれば必ずクリア出来る。
特典Perkを使えばRPGが苦手な人でもクリア出来るでしょう。

そしてこのゲームの最後のやり込み要素に闘争心や絶望やらを味わってみて欲しいです。

プレイ時間は実績全解除を目指すなら7、8時間は掛かるかと思います。一回のプレイ自体はそこまで長くはならないですが、やはり筆者としてはじっくり集中してやって欲しいですね。

現在、Amamori Lab様は新作を製作途中であるとのこと。
予定では今年夏に完成するとのことですが、今作の出来を考えればとても期待出来ますね。