Daily Life (製品版)

RPG,R18製品版の感想,ライター:さたける

*この感想は [さたける]さんに書いて頂きました。
*v1.00の感想です。v1.01にて「戦闘が簡単になるモード」が追加されたようです。
会社で働くOLのお姉さんが主人公。会社の壺を壊して借金1000万円を作ってしまい、返済のために金策に走る……という目的がありますが、どちらかと言えば恋に趣味に仕事に……と公私あわせてOL生活を体験する生活シミュレーションゲームです。あまりオタクコンテンツっぽくは無く、社会人を主題とした火曜ドラマ、青年コミック、レディースコミックなど全年齢大人向け作品に近いノリです。
また、メインコンテンツは百合……ということで社会生活を通して、小さい頃からの親友である主人公と友人がだんだん恋心を抱きはじめ恋人になる関係を丁寧に描いた物語を楽しめます。エロ同人っぽさが薄く、リアルさが出ていて、「恋と、ギターと、青い空。」のような真面目なレズビアン関係を描いた作風です。
登場人物は、こんな人いるいると思わずうなづいてしまうような人物設定で、生々しさや泥臭さなどの現実感があります。主人公の彼氏?は無職で主人公宅にてゴロゴロしてるニートだし、微妙にぽっちゃりしてる主人公の友人はサバサバしているけど面倒見がよく、さり気ない気づかいが上手。会社の上司は事なかれ主義で、問題が起きても知らんぷりだし、会長は金持ちでスケベ。
こういう性格のキャラがドラマを繰り広げる点が本作の一番の魅力。

仕事に趣味に恋愛に、20代女子の生活を体験する生活ゲーム

ゲームは毎日マップを移動してイベントを発生させ進行します。朝・昼・夕・夜と変化するようで、平日なら朝は会社に通勤して業務をこなし、夕方の業務終了後に友人と合流して学校体育館に移動してバレーボールを楽しんで……夜はたまにバーで飲み会を開いたり、非合法の賭けストリートバレーボールに参加したり。こうして1日が過ぎていきます。
バレーボールは、主人公と友人がペアとなり2Vs2(例外あり)のサイドビューバトル。物理で殴り合い、相手チーム全員をKOさせた方が勝ちというバトルマッチのようなルールに改訂されています。つまり、試合=ツクール系のサイドビューバトル戦闘です。何故かラケットを使わずネギが武器な主人公。
戦闘の印象としてはバレー関係とボス戦は強敵ばかり。戦闘バランスは厳しめ且つ運の要素が強めです。敵がタフなため、1試合は2〜4分ほどと時間がかかります。
また、戦略性が強く、単純に「たたかう」だけでは敗北します。単純に攻撃すると命中率が低いので、相方がトスで攻撃力・命中率を上げて攻撃したり、敵が固いので相方はブースト系で底力を上げたりと、攻撃役とサポート&回復役で合わせて工夫します。敵の攻撃力も高く2〜3回ダメージを受けたら戦闘不能になり、後半だと状態異常攻撃も多用してくるため、油断するとすぐ全滅に。
数試合勝ち抜くとエキシビジョンマッチが発生し、勝つと次のリーグに……という流れ。メインイベントのトリガーとなっていて、次のリーグに進むたびに主人公と友人の仲が進展します。

バレー突っ込み1 バレー突っ込み2 バレー突っ込み3
▲作中キャラもルール変更を疑問に。余談ですが、このように本筋(友人との恋愛)に関係ない事に関しては割とコメディな会話で楽しめます。

また、毎日業務やバレーを進める傍ら、主人公の周りでゆったりとメインイベントが発生します。例えば序盤はネギを育てていた庭園にネギ泥棒が入り、主人公が(ネギを持ってたから)疑われたため、解決に翻弄されることに。
ここで興味深いのは、昼に友人と行動する場合は土日限定、バレーボールの練習試合は月水金、ストリートバレーは火木土日など、日によって条件が変化することです。このイベントの進行条件は会社でネギ好きの社長に聞き込み、バレー練習場で知人に犯人の目撃情報を貰い、そしてごにょごにょして最後は友人と一緒に犯人らしき人物へ突撃!という流れですが、見てわかる通り同日に全てのイベントを達成することはできず、2週間の長丁場になります。
このようなメインイベントと並行して業務やバレーを行い、また中盤以降に解放される山や森などのフリーダンジョンで鍛えあげていると、彼女が感じている日々の生活の忙しさや充実さみたいな生活観を体験しているかのようです。ちなみにダンジョンで鍛える系統はサブイベ扱いですが、ボス戦では「過去の克服」をテーマに友人やニートの彼氏がトラウマと戦うような深いイベントを見ることができます。

ダンジョン
▲戦闘がバレー形式なダンジョン

友人とペアを組んで趣味で戦うバレーボールで借金返済だ!

さて、一応ですが、借金1千万円を返済することが目標となっています。経済系のゲームは収入・支出をバランス良く配置し、そして収入の額が後半になるほど大きくなる事に面白さがあるのですが、本作の場合はそれを戦闘で管理しています。
まず、収入の手段ですがサブイベと日常生活系のイベントはキャラの強化か金策が関係しています。毎日の事務、アルバイト、夜の賭けストリートバレーはその場で戦闘を行いお金が貰えますし、バレーも次リーグのための試験に合格すれば、素敵な装備と大金が貰えます。

戦闘1 戦闘2 戦闘3 アルバイト
▲バレーだけでなく、あちこちで戦闘(妄想みたいなもので本当はちゃんと仕事している)。基本的に事務なら会社の机、アルバイト(画像4枚目)なら生徒に話しかけて発生。

そして、支出ですが、戦闘のためにアイテムが大量に必要です。バレーなどは連戦が基本のため、回復アイテムは必須だし、ブースト系のアイテムや状態異常回復が重宝します。そして、序盤だとアイテム購入で日々稼いだ金額の8割ぐらいが吹っ飛んでいき、本当に借金返せるの?っと思いながらもバレーのリーグ戦報酬で一気に稼いで嬉しかったり。実は期限がないので自分のペースでゆっくり進めることが可能。

アイテム
▲アイテムや装備の効能、スキル名と効果などは面白い内容が多いので一読の価値あり。勿論後半になれば強敵になり貰える金額もアップ。その分、高価なアイテムも必要になり支出もアップ。

忙しい日々の中、徐々に深まっていく絆

冒頭でも書きましたが、性格設定などが長所短所含めて、現実でもいそうだと思える人物描写をしています。それは外見にも表れていて、やがてレズ友となるサバサバしつつも面倒見がよい友人はちょびっとだけぽっちゃりしています。で、私は「あー現実にもいるなぁ、温和で面倒見がいいぽっちゃり女子」とか思ってしまった。余談だけど、そういう女子って包容力があるからか下手な美人よりモテるよね。

ぽちゃ
▲主人公がある人物に「ぶた」と罵っているところを盗み聞きした友人。やっぱり女の子なら体型が気になるよね。

ニート1 ニート2
▲幼馴染みからそのまま彼氏っぽい関係になった男。仲は冷え切っている。

その上で、表面上だけでなく主人公、友人、彼氏はそれぞれトラウマ系やマイナス方面の性格に関する裏設定も持っています(それも現実にありそうな裏設定)。それをどう克服するか、彼氏の裏設定に対して主人公と友人はどう接して最終的に彼氏はどう解決を図るか……などの人間ドラマがしっかりしたお話です。

負の性格
▲友人が理解している主人公の欠点。友人は主人公が自力で解決できるようアドバイスしながら、ゆっくりと見守っています。

ただ、それだけだと現実味がありすぎて面白くないので、バレーのルールが変わったことに対する突っ込みや、社長のネギ好きを大きく物語に絡ませたり(上述のネギ泥棒以外に、主人公が手持ちのネギで思わずオナってしまい、それを持ち帰り忘れたら社長が食べちゃってたみたいな話もある)、彼氏のダメ方向も、ちょっとこれは……と思うほどの現実感の薄いダメっぷりを発揮することもあったりで性格を多少誇張して物語としての面白味を出しています。

ネギオナ1 ネギオナ2 ネギオナ3
▲オナニーのおかずは拾った官能小説。興味ありあり。

一方、そういうリアルな生生しさは性方面にも表れていて、二次元女子を愛する男が抱く女子像は粉々に砕け散りそうな、割と現実感のある性描写になっています。主人公も友人も過去にとっくに性体験は済ませていたり、主人公が実は彼氏が早漏でエッチができず身体を持て余しているため、官能小説などを見つけてしまったら暴走してオナニ−に耽ってしまったり、友人は頼まれると断れずに仕方なしにエッチな事をしてあげたり……とこの辺も性格に基づいたエロが多かったですね。

あったことメモ
▲あらすじはメモから読むことが可能。読み返すと、そのイベント中に主人公が思っていたことがわかって新たな発見も

そんな彼女達の仲はペアとして戦闘バレーを勝ち抜いていくことで進展します。この進展過程が丁寧で、友人と彼氏が話している時に感じたモヤモヤ感は何に対してモヤモヤ(嫉妬)しているの?という自問から始まり、恋を自覚しながらも自身の境遇から素直になれない主人公と、その気持ちを理解しながらも主人公をゆっくりと待つ友人、そして両想いになった後の生活までを、ゆっくりと進む時の中で感じ取ることができます。

もどかしい1 もどかしい2

その際に描かれる性描写で大事なのは男性とのセックスです。

「女性同士のいわゆる百合系となりますが、本作ではストーリーの構成上、普通に男性との行為も発生します」

例えば自分がレズとは気づいていない年頃の娘さんなので男性との性行為があってもおかしくなく、そのために身体を持て余して彼氏にセックスを迫るシーンや、例えば二人が一人の男性に抱かれれば姉妹だよね、との言い訳で男性に抱かれてみたり。これが後のレズ関係になった二人との対比に大きな影響を与えています。

男
▲主人公も友人もゲーム中盤までは男と関係を持つことがあります。

そして、エッチもレズ関係になるまではオナニーシーンが非常に多く、逆にレズ関係になると二人の絡みシーンばかりになります。普通の絡みから始まり、ペニパンなどレズアイテムも登場。甘々な関係でエロだけでなく、一緒に風呂に入るシーンや家で一緒にお泊りする時の会話、恋人になってからのバレーなど初エッチ後からの二人の会話も恋人な関係になっていて微笑ましいです。

キス1 キス2 愛の日常 レズプレイ
▲おはようのキスやセックス後の一言。こういう些細な場面から愛情が伺える

このように、バレーという友情から愛情に変わる過程以外に、性描写からも友情から愛情に変わる過程を描くのは18禁だからこそ実現できた描写で、また、心に来るものがあります。正直に言えば、エロテキストが弱く実用性としては薄いのですが、セックスが物語に与える印象が大きく、シナリオとしては成功していると思います。
日々のルーチンワーク(毎日家から会社に行き業務で戦闘して、家で着替えて友人宅で合流してからバレー練習に行き戦闘して家に帰って寝る)……が毎日繰り返され、戦闘中心でストーリーがなかなか進まないのは、プレイしていてちょっと辛かったのですが、そのおかげで日常生活の中でだんだんと深まる愛がしっかり表現されている点が良かったですね。
一応18禁作品ですが、抜き用のゲームというよりは、二人の愛情や周囲を取り巻く環境を表現するために18禁になったと考える方がしっくりするお話です。
だいたい50日クリアでプレイ時間は15時間ほど。基本CGは45枚、回想は31。同人っぽさよりもリアルさが表に出ているレズ関係の話がゲームで体験できる点は大きな長所でしょう。このようなストーリーはエロ同人関連では初めて見ました。また、相反しますがバレー関連で戦闘が多いので、戦闘好き向きの(戦闘に時間を割くのが苦手な方には勧めにくい)ゲームです。