人間的な悪意のカタマリ (製品版)

RPG, R18製品版の感想, ライター:シカク

人間的な悪意のカタマリ
人間的な悪意のカタマリ[ミニマムゲーム工房]

*この感想は [シカク]さんに書いて頂きました。

『ナイトメア少女ロリータ』にてポテンシャルを見せつけたミニマムゲーム工房様。
その第二作目『人間的な悪意のカタマリ』では何を見せてくれるのでしょうか。

いたいけな少女フラウはヒトを悪魔にしようとする組織で身体を改造されます。
小さな四肢に不釣り合いな片翼が悪魔の証明。そして悪魔な少女に下された評価は「出来損ない」でした。
出来損ないとして処分される寸前だったフラウは決死の覚悟で研究所を逃げ出し、そこで一人の少女と出逢います。
この出逢いがもたらす人間的な悪意の結末とは果たして。

というのが事のあらまし。

今作も意欲感じるゲームシステム。よりサークル様の趣味が現れてきたキャラクターとビジュアル。
前作「ナイトメア」と比べ、大きな成長を感じさせる今作。
前作に引き続きシカクがレビューを書かせていただきます。

より洗練されていくゲーム 個性豊かなキャラ達に彩られる出来損ない悪魔のお話

▲垢抜けない少女フラウ 善悪も知らなさそうな少女に魔の手が掛かる

今作のヒロインフラウは怪しげな研究所にて人間を悪魔に変える改造を受けています。
可憐な見た目にミスマッチな片翼と陰を感じる虚ろな瞳が印象に残りますね。
この少女フラウの時点で先に待ち受ける黒い展開を想像させてしまう辺りがサークル様の成せる業です。
漂う不穏を感じ取ってしまう。

▲他キャラを並べることでより際立つフラウの黒さ

開幕からいたいけな少女を「出来損ない」扱いしたり、性処理玩具に任命したりと冒頭から少女を容赦なく蹂躙する展開。
前作にもあった『カワイイ×コワイ』ですね。
今作もこの素敵なイメージは健在であり、更に大きなパワーアップを果たして帰ってきています。

やがて処分されることを感じたフラウは命からがら研究所を抜け出し、そこで一人のオンナノコと出会います。
それがクリルという子。

▲出来損ない悪魔のフラウが置き去りになりそうなぐらい濃いキャラ

フラウの破滅ばかり想像してしまう展開が続くなかでようやく登場したキャラなのですが、
これがまた強烈な個性を放っています。台詞回しにその個性が詰め込まれており、
今まで暗かった展開が一気に和んでしまう勢いです。フラウとクリルとのやりとりは今作の癒し枠。

▲思う存分癒されるのだ これが最後の癒しかも知れないのだから

このキャラ同士のやりとりがあるお陰でキャラ達の個性を掘り下げることに成功しています。
より『カワイイ』を体感できますね。前作は主人公がずっと独りだった為、ビジュアル以外でもカワイイ要素が増えたのは単純に見てて楽しい。
今回はホラーではないので前作よりもコワイが減ってしまいました。しかしそれ以上にカワイイのでそこまで気にならない筈。
でもやっぱり後ろ暗さが残っている。和やかな空間の中にふと気付けば陰を感じる所があるのだ……。

クリルと出会い、自分の居場所を感じることが出来たフラウ。
しかし、とある出来事からあの研究所に忍び込まなければならなくなったフラウ。
穏やかな日々が瓦解していく様はフラウに潜む悪魔が少しずつ目覚めていくかのようです……。

今作もあります個性的なゲーム!今回は直に戦います

今作はノベルパート、バトルパートと分かれており、
タイトル毎で区切られた物語を読み進めていく中でバトルが差し込まれていく、という進行形式です。感覚は前作と大方同じ形式ですね。

▲目次のようなシナリオ選択画面。ノベルゲームとしての側面が強くなりました。

ノベルパートはタイトルで分かれているのでシーンを何となくで記憶し易く「あのシーンもう一回みたいなぁ……」なんて時も見返しやすいです。
他にもシナリオ選択で間隔を空けることでテキストの読み疲れや飽きが来ないので、
テキストに力を入れまくったテキストゲーと相性が良いんじゃないか。と思ったりしました。
悪魔、研究所と設定を凝らしたり、なにより『カワイイ×コワイ』というニッチな属性持ちと潜在力ばっちりなので尚更。
テキストの基本的な部分は飛び抜けたりしない安定したクォリティを前作でも見せているので、
ゲームと直接―――ではなく間接的な所で将来性をまだまだ見せてくれます。
バトルパートの存在もそのテキストゲーとの相性を感じさせる要素の一つ。親和性は高い筈。

そして今回のバトルパート。
前作「ナイトメア少女ロリータ」では元ネタのあるカードゲームを改変した、小さいけど個性的なミニゲームがありました。
今作にもサークル様の意欲的なゲームが実装されています。今回は立ちはだかる敵をその悪魔の力でやっつけるという直感的な内容。

▲実はフラウの一人称視点なんです。

戦闘はリアルタイムで行われます。ぼーっとしていればやられます。フラウの悪魔の力を持って敵をやっつけましょう。
ではその悪魔の力はどう行使すればいいのか。

こちらが出来る事は攻撃、防御、回避、魔法(それから魔法切り替え)の四つです。
ゲームの流れを解説しながらこの四つの行動を説明します。

攻撃は読んで字の如く、ですがこのゲームには攻撃にActionゲージという動力源があります。
これが溜まり切って初めて攻撃が可能になります。攻撃には間隔が必要、ということですね。
攻撃すると後述の魔法に必要なMPもちょっとだけ回復しますのでどんどん攻撃しましょう。
ですが、欲張り過ぎるとリアルタイムバトル故の思わぬ被弾も。

▲攻撃の際に利き腕が突き出される演出が素敵

敵もこちら同様に間隔的に攻撃します。そのままではダメージが痛すぎるのでそこでは『防御』か『回避』をしましょう。
敵の攻撃には前兆があるので、事前にどちらをしておくかを決めておくと良い感じ。

防御は防御ボタンを押している間だけダメージを軽減する行動です。
防御してもダメージが結構痛いので防御は成功出来るようにした方がいいでしょう。

攻撃するぜ!→敵も攻撃してくるじゃん!→あぁ防御し損ねた!→敗北なんて事故はこのゲームではあるあるです。
目まぐるしいけどいっそ一瞬だけ攻撃を止める、という判断もありです。

しかも防御にはGuardゲージを消費します。
Guardゲージ勿体無いから攻撃を良く見よう。と思ったら今度は攻撃全然してなくてジリ貧で敗北、なんてことも。
Guardゲージは防御の他に魔法でも使用することになるので注意です。
と書くと難しそう。でも防御はゲージがちょっとだけでもあれば出来るから焦らずに行えば大丈夫。
慣れればゲージ回しは特に意識せずとも出来ます。

▲防御は腕だけでなくバリアーの視覚効果とSEで分かり易い

回避は敵が攻撃をする前兆が見えた時に←か→どちらかで行える、ダメージを受けない完全防御です。
防御してもダメージが痛いゲームバランスなので回避は確実に出来るようにしたいです。回避すると後述の魔法に使うMPも回復するので尚更。
こちらのMP回復は攻撃によるものよりも効果が大きいので回避はこのゲームに重要な要素―――
―――なのですがこの回避にはActionゲージ同様の制限があり、連続では使えません。
Actionゲージよりも回転率が低いので必然ノーダメージ撃破はほぼ不可能となっています。
同じ自衛行動の防御とはちょっと違う使用感なので被弾事故は寧ろこっちの方が起こり易いかも。
重要性故に攻撃同様の欲望が芽生え易いので余計に。

▲今作の重要行動。60になると回避可能

魔法はMPを消費して放つ特殊技です。大きく分けて攻撃魔法とHP回復魔法があります。
MPの他にGuardゲージを半分消費するのでどちらかが不足すると使えないことに注意。
MP最大値に対して消費MPが大きいので前述の攻撃や回避によるMP回復を当てにしながら使用することになります。

また、予めセットしておいた三つの魔法を↑と↓で使い分けが可能です。
この事から攻撃、防御、回避よりも出来る事の幅が大きく、それでいて今作の戦闘を複雑に感じ易い要因の一つです。
戦闘に慣れるまで一旦忘れてしまってもいいかも。

また魔法の威力は属性の影響を受けます。
三つの属性で三竦みになっており、赤→緑→青→赤→……となっています。

比較的回し易いGuardゲージとMPさえあれば発動できるので使いこなせばスピーディな攻撃も……とは思うのですが、
攻撃よりも防御の重要性が大きいバトルバランスだったので少ないMPは回復魔法に回したくなり、筆者は攻撃魔法を使う事は殆どなかったです。
今作の惜しい所ですね。こちらは敵の種類やパターンが増えることによって改善出来たかも知れません。

以上の要素を駆使して敵を倒します。
今作のゲームは実戦形式のチュートリアルが用意されており、敵と再戦可能なのでゲームの雰囲気自体は掴み易いです。
しかし勝利を収めるには慣れが必要であり、幾らか難敵も存在します。ギリギリまでバランス調整をしたことが感じられますね。
その救済措置としてなのか魔法や装備品が買えるショップがあったり、フラウの能力値を上げることも出来ます。
他にも難易度変更も用意されているのでどうしてもゲームに慣れない方は使用を考えてもいいかも知れません。

▲( )の数値は最大値みたいです。他は無尽蔵に上げられる

▲店員さんがかわいい。でも他には一切絡まない勿体無い御方

ラスボス以外は初期値でクリア確認したので筆者としては初期値難易度デフォルト推奨。
慣れると面白い戦闘システムなので負けながらでも慣れて欲しいですね(敗北エロもあるよ)。
ラスボスに関しては小手先だけでは勝てる気がしなかったので装備を整えて防御LVだけMAXにしました。恐らく装備無しでも勝てる。

演出が大幅強化!前作の雰囲気が好きな人は思うはず。「これだ!」と

前作は意匠感じるドット絵、魅力的だけどニッチなジャンル、面白いミニゲームと、
見所は多いながら処女作故に突き詰められなかった箇所も見られました。
その一つに演出関連がありました。
しかし今作は前作で出来なかったことを実現したかのようなパワーアップを遂げています。

先ず真っ先に挙げられるのはキャラが増えたこと。
少し前にキャラクターの魅力をちょっと書きましたが、何故キャラがより魅力的になったのか。
それがキャラ数の増加です。
前作ではコロコロと表情の変わる、感情豊かな立ち絵を見ながらテキストを読み進めていくノベルゲームに近いものでした。
その基本は変わりませんが、今作はキャラの数が増えた事に伴いキャラ同士の対話が多くなり、単純に賑やかになっています。

▲キャラ同士の掛け合いでかわいさアップ。

キャラが増えたので立ち絵での表情豊かさがより分かり易くなりました。そこに加えて所々に挟まれるカットインの演出。
これがまた良い仕事をしています。

▲印象を深く残すカットイン

話の緩急、アクセントを付ける。直前の会話の強弱をはっきりさせる。急な抑揚を演出したりと大活躍のカットイン。
所々で不安を煽る今作と良くマッチしていて、不確かだからコワイモノが明確に恐怖になる瞬間。それを体感させられますね。

こうして様々な演出の強化のお陰もあり、周りの強すぎるキャラ達にあたふたすることの多いフラウです。
しかし没個性なのかと言えば決してそうではく、増量された表情差分によって或いは他の子たちよりも絶対的なキャラ立ちを、見せてくれます。

▲気弱で優しい少女の見せる陰。これがカワイイ×コワイなのだ。

普段の人間的な立ち振る舞いが彼女の悪魔的な感情をより強くさせます。
フラウという少女はサークル様の掲げるイメージの体現者なのかも知れません。

少女の陵辱。堕ちるまで貪られる快楽は夢か現か

今作のエロシーンは大きく分けて二つ。フラウの敗北エロと勝った相手へのエロ(極一部例外有)です。
それから物語の合間に挟まれるエロもありますので、今作のボリュームに対してエロが多く感じます。お得感。

今回もドット絵による力入ったエロシーンが展開されます。
多くの場合、負けた者を淫らな夢に堕とす、という内容です。
悪魔、夢と聞くとついつい前作を思い出してしまいますね。
エロシーンは全て陵辱です。今回も容赦なく男の魔の手が少女に降り掛かる。
現実にも似た感覚の夢は最早現実そのものと言ってもいいはず。

そして負けて悪夢を見るのはフラウも同じです。
筆者お気に入りの敗北エロという名の悪夢はこちら。

▲普段のフラウとエロいフラウの差が引き立つシーン

ボテ腹の少女という中々ハードな内容。
フラウ自体は垢抜けない少し弱々しい雰囲気の少女なのですが、
このシーンは別であり、積極的でエロに対しても自分から喰って掛かるような女になっています。
普段とのギャップが引き立ち、「かわいい」が「可愛い」に変わった。そんな表現が適していました。

この変わりようは勝利によってフラウに負かされたモノたちと同じ変化であり、
フラウが見せる筈だった悪夢がそのまま自身に返って来ているという描写ですね。
フラウがまだ不完全故に能力の反射という事態になっているのでしょう。

そう考えると他のエロシーンでフラウの悪夢を見た少女達が最後にはエロに従順になるのも頷けます。
フラウが明確な敵意を持った相手には相応の陵辱が待っており、凄惨も救済も彼女の心一つで変わる、ということ。
物語を進めていく内にフラウの中に大きな力で欲望を叶えたいと衝動が芽生えつつあります。
その矛先は大事な人に、時には対峙したモノに向きます。これは悪魔の感情と言ってもいいのではないでしょうか。
それらの不安を煽るようなテキストや悪夢という状況に置かれた少女の考えがエロシーンでも見られます。
只のエロシーンでは終わらないのが今作のエロシーンの特徴の一つ。

それから、前作との比較になってしまいますが、今作で描き下ろされたCGでは男の描画がきちんとなされてます。
少女故に映える体格差が感じ易くなり、よりエロの濃さに結び付くようになりました。
クリア後にCG回想とシーン回想両方が見れるようになり、同人エロゲーとしての水準の向上があがりました。

クォリティの単純な上昇というのはサークル様の成長を一番感じ易い部分です。
前作でミニマムゲーム公房様に感じる物があった方は嬉しい変化でしょう。

エロシーンの基本情報としましては。

基本CG枚数 11枚+(差分22枚)
カットイン等 13枚(立ち絵は含まず)

となっています(販売サイトから引用)。

今作のまとめ……

個性的なキャラが多く増え、掛け合いをすることで掘り下げも出来ている。
ノベルパートを彩るセンス光るカットイン描写。
自身の作品の持つ雰囲気をよく理解し、より映えるようにしたエロCGの進化―――
―――と並べれば数多い前作からの成長。
同人エロゲーそのものの水準値が上がり、ゲームとして完成度がより高くなっています。

しかしそれだけではなく、新しいものを作ったにも関わらず意欲感じるゲーム部分が今回も面白い。
リアルタイムで目まぐるしく情報が変わるはずなのに、それでいて致命的なバグも見られず、安心して遊べるのは流石のひとこと。
ゲームバランスも考慮されており、MP回復手段が二つ用意されている辺りなんかは面白い調整でした。
回復手段を一つに統括していたのなら、恐らく大味なゲームバランスや極端な攻略法の発見に至っていたでしょう。

ですがその一方で誤字脱字が今作にもちょこちょこ見られたのは痛い点です。
綺麗な白地には黒いシミが目立つ様に、他の部分が改善されている故に目立ってしまう。

それから、今作はホラーではないのでグロテスクな描写が極一部しか無いのは前作からのプレイヤーからはちょっとした変化かな、と。
前作のホラーな雰囲気はあの作品の大きな魅力でもあり『コワイ』の要素でもあったので。
キャラの掛け合いも多くなっていることも振り返るとカワイイ寄りの作風に仕上がったな、と感じました。
少女に対する容赦の無さは健在なので『カワイイ×コワイ』の比率を変えた、と言った方が正しいですね。

物語に関しては前作プレイヤーならニヤリとくる悪魔という単語や描写があります。
フラウの徐々に芽生える悪魔的な感情を見ると、前作プレイヤーの方なんかは特に想像が捗るのではないでしょうか。
『人間的な悪意のカタマリ』とは物語ではなく、出会う人物でもなく、今作のヒロインフラウに向けられた題なのかも。
サークル様のイメージを体現したかのようなフラウ。完結したかのように見えた彼女のこれから。
それにぼく達は悪魔を見るのか。果ては天使を見るのか。
これからも活躍が期待出来るサークル様です。