混沌の魔窟殿~アヒアハン19世の指令編~ (製品版)

2018年4月28日ACT,R18製品版の感想,ライター:エローン大君

*この感想は [エローン大君]さんに書いて頂きました。

解説プレイ動画:

初ドット絵&初アクションゲームとは思えない超良作きたる

感嘆しました。ここまで考えつくされたゲームも早々ないです。
駄作ラボさんの「混沌の魔窟殿~アヒアハン19世の指令編~」の感想でございます。
冒険者「マリアベル」が、アヒアハン19世の命によって、魔物が巣食う洞窟に向かう……と王道な物語。
それながら、ゲーム性はガチ!様々な戦略・やり込み要素等満々な一作となっております。

各ステージ、魔物との真剣勝負! アクションゲームが苦手な人でも救済措置あり

本作は、横スクロールアクションのボス戦を連続して遊ぶ、と言った感じのゲームです。
魔物撃破ごとに幕間があり、経験値を集めてのレベルアップや、後述する「宝箱」や「よろづや」で主人公を強化。
「NORMAL」から「HELL」まで全4種類ある難易度の全てでクリアを目指す、そんなやり込み要素が用意されています。
難易度が上がっても、見られるエロシーンが増えるわけではないので、ライトゲーマーも安心。
ですが、NORMALから1つ難易度を上げるだけでも、生半可な成長では敗北必至ですので、コアなアクションゲーマーにはたまらない一作です。

基本操作としては、矢印ボタンで移動、Zキーで攻撃、Xキーでガード、Cキーでスキル。
そして、Aキーで敵の攻撃を避けるバックステップの、1軸4ボタンとなっております。
スキルはストーリーを進めるごとに解禁され、矢印キーとの組み合わせで4種類使うことが可能です。
近距離用の攻撃から、かめはめ波を思わせるビーム攻撃まで色々なスキルを実装。
「周回でのやり込み」が楽しいゲームですので、全てのスキルを解禁した状態で戦える2周目以降は戦略の幅が大きく広がりますよ。

全5ステージの本作では、各ステージクリアごとに宝箱やよろづやで、アイテムを入手することができます。
入手できるアイテムは、回復アイテムから、武器や主人公の性能を強化するものまで様々。
よろづやさんで何度も同じ品を買っていると、お得意さん故なのか更に効果の高いアイテムを売ってくれることも……!
魔物撃破で入手できるゴールドで、宝箱を再開封(ゲーム内通貨を使ってのガチャ)しまくれば、主人公の攻撃力がうなぎ登りになったりもします(※難易度によっては魔物が一撃死するレベルで)。
ちなみに、回復アイテムはファンクションキー(F1キーなど)で使用。というわけで、一旦Zキーなどから手を離さなければなりませんが、敵との距離を取れば結構安心です。

さて、王様に魔物を倒してもらうために呼び出された、本作の主人公「マリアベル」。
スキルで魔法的なものも使えますが、Zキーを使ってメイスを振りまくるのがメインの物理攻撃系僧侶です。

1面:スライム
2面:オウガ
3面:触手壺&サキュバス
4面:スライム&オウガ
5面:???

全てのステージが、横スクロールアクションのボス戦のようなものなので、それぞれに有効な攻略パターンがあります。
対する魔物達も、地面から触手を生やして遠距離から攻撃する者もいれば、近距離でガッツリダメージを持っていく者まで、バリエーションは豊か。
やり込みをすればするほど、攻略パターンの組み方が重要になりますので、様々なスキルを試しながら練っていきましょう。

ちなみに、魔物達は体力が一定以上減るたびに、新技を使ってきたり、攻撃頻度が上がったりとパワーアップします。
第1段階で余裕ぶっていると、本気モードで一気に体力を削られ敗北してしまうことも……。一瞬も油断の許されない真剣勝負です。
もし敗北してしまっても、「経験値でレベルアップ」という形でステータスがアップ!
いくらでも再戦できる上、再戦すれば再戦するほどクリアしやすくなるので、アクションゲームが苦手……という人でも安心です。

難易度調整から当たり判定まで アクションゲームとして練られたゲーム性に舌を巻く

と、簡単にゲームとしての概要を紹介してまいりましたが、本作において注目すべきは「アクションゲームとしての練り方」です。
個人的に凄いと感じた部分を3つ挙げますと、

・プレイヤーに爽快感を与えつつも、ゲームバランスが成立する「無敵時間」の使い方
・基本から応用までしっかりとカバーした、ステージごとの難易度調整
・ユーザにミスしたと「納得」させる当たり判定

と言ったところ。実際にある程度やり込まないと分からない部分もありますが、簡単に説明いたします。

まず、本作における魔物達の攻撃に対しては、「ガード・バックステップ・ダッシュでの回避・攻撃により止める」と4つの対処法が存在します。
ガードは「被ダメージを1/10に減らす」、バックステップは「1キャラ分下がる代わりに隙がある」、ダッシュは「数キャラ分移動する」。
このうち、バックステップとダッシュには無敵時間があるため、直撃のリスクはありますが、上手く使えばガードすることなく完勝することも可能です(というより、最高難易度だとガードしてても凄く痛い)。
ダッシュの無敵時間で突っ切るのが一番安全ですが、それだけに頼ると距離調整に失敗してしまう。
そこで、隙はある代わりに1キャラ分しか移動しないバックステップを使う。この使い分けが楽しいわけですね。

難易度を上げてプレイしていくと分かりやすいのですが、本作で有用なのは「相手が攻撃を出す直前に、プレイヤーが攻撃を当てて止める」、いわゆるハメ技です。
つまるところ、距離調整がかなり重要になるわけですが、画面端まで魔物を追いつめると攻撃判定が上手く刺さらないことも……。
そこで、バックステップやダッシュを使って、その無敵時間をもって攻撃をしのぐのがすごく楽しいわけですよ!
また、魔物の遠距離攻撃に対しても無敵時間が成立するため、「遠くで様子を見て遠距離攻撃で隙が出来たら、ダッシュで一気に詰め寄る」なんてプレイも可能。

しかし、直撃・ガードしてしまうと、ガッツリとHPは減ってしまう。プレイヤーに爽快感を与えつつ、一方的にユーザが強いというわけではない、絶妙なゲームバランスになっているのはすごいと思います。。
ちなみに、試しにNORMALでノーアイテム・ノーコンティニュークリアが出来るかを試してみましたが、4面目で恐ろしく苦戦して半泣きになりました。
アクションゲームが得意なプレイヤーは、低レベルクリアを狙って遊んでみてはいかがでしょうか。多分、最終面のとあるギミックで心が折れる。

そして、難易度調整に関しても、「基本→応用」というゲームデザインの流れがきちんとできているところが凄いと思います。
1面・2面のスライム・オウガ戦は実質的なチュートリアルで、「地面からの攻撃があること」「ガードなどの重要性」を身をもって教えてくれます。
そして、3面のサキュバス戦は、それらで培ったテクニックを応用して戦わないと、終盤になるにつれて厳しくなっていくという上手いバランス取りを行っております。
面クリアごとのスキル解放も、その魔物に向いた物がセレクトされており、プレイヤーが自然とテクニックやスキルの使いどころを理解できるよう、配慮されているのも良いところと言えましょう。

最後に、本作の当たり判定に関して。
ここで言う当たり判定は、プレイヤーに対する攻撃の判定です。
アクションゲームやシューティングゲームにおける当たり判定は、ゲームバランスを取る上でも重要な部分となります。
「プレイヤーの動体視力がゲームの当たり判定についていけてるか」というのがキモでして、キャラや攻撃の見た目通りに当たり判定を設定すると、プログラム上の当たり判定は正しくても「当たってないはずなのに!」とプレイヤーがストレスをためることも。。

その観点から本作を見てみると、本当に当たり安定が絶妙。
雷や土など派手なエフェクトを使っているにも関わらず、プレイヤーに「攻撃を食らってしまった」
と感じさせる説得力があり、エロを抜いた一つのアクションゲームとしてみても凄く面白い作品となっております。

油断すると一撃死も?宝箱ガチャで育成&高難易度チャレンジだ!

本作では難易度は「NORMAL」から「HELL」まで4種類ありますので、やり込み要素も満点。
実は、各ステージ幕間にある「宝箱」は、魔物を撃破するたびに入手できる「ゴールド」(ゲーム内通貨)を使うことで、何度でも開けることができます。
また、よろづやで買い物を何度もすると、効果の高いアイテムを売ってくれる以外にも、「印」というパワーアップアイテムがもらえたりもします。
「印」には、「移動速度上昇」「攻撃命中時に確率でHP回復」「確率で死亡を回避」と凄い能力があるので、是非とも入手&強化したいところ。

宝箱やよろづやを使うことでしか入手できないアイテムが多々あり、入手すれば入手するほど主人公は強化!
最高難易度になると、直撃=即死級のダメージを食らう場合もあるので、ゲーム内通貨をためて、宝箱ガチャには積極的に挑戦していきましょう。
ただし、中身が空っぽだったり、連続して開けると必要ゴールドが高騰しまくるので、ほどほどに抑えましょう。宝箱ガチャは、適度に楽しむ強化です。
もちろん、高難易度クリアには、ステータスを上げるだけでなくプレイヤースキルを上げることも重要。
敵の攻撃に応じ、防御するか・回避するかを瞬時に判断して、操作できるか。ゲーマーとしての腕が試されます。

エロドットのクオリティは全て高いが、シーン不足……

ここまではゲーム部分のすばらしさを語ってきましたが、ここからは肝心のエロ面について語りましょう。
本作のエロシーンは全てエロドットアニメ。
魔物に敗北してしまった時は主人公が犯されるシーンが流される他、犯されている女性達が背景でも描かれます。

というより、本作はアクションゲームとしてのドットアニメに枚数を割いているためか、そこで一旦力尽きてしまったらしく、

回想モード(クリアで解放)の段階で、主人公のHドットアニメが3種類しかない、シーン数の少なさがもったいないと感じました。
全5面ですし、敗北シーンを挟む余地はまだあるので本当に惜しいところです。

また個人的に、スライムのエロの魅せ方は非常に凝っていて素晴らしいと思うのですが、

「着衣での立ちバック」のオウガHシーンが構図の関係で挿入部すら見えなかったり、少し物足りないシーンも。
主人公よりも、モブキャラの方がHドットアニメが多いのはなんだか勿体ないですし、Hシーンを入れる余地はありそうですが、この低価格帯でこれ以上を求めるのも酷と言いますか……。
エロドットアニメの質としては、おっぱいの揺れへのこだわりを感じ、すごく大好きです。
スライムに犯されているモブ子ちゃんのドットアニメは、まさに素晴らしいの一言……。

ドットアニメも操作性もアクションゲームとして高品質 難易度HELLをクリアするまでやり込みは続く……

というわけで、「混沌の魔窟殿~アヒアハン19世の指令編~」の感想でございました。
アクション部分・エロ部分ともにドットアニメの質が高く、ゲーム性も操作感が良く楽しめる一作でございました。
エロシーンの少なさが問題点となりますが、800円台でこの内容であれば正直満足できてしまうと言いますか、次回作に期待と言う感じですね。

そんな本作ですが、現在のゴールデンウィークセールで2ヵ月前に出た作品にも関わらず、50&オフという太っ腹な状況になっております。
最低難易度であるNORMALをクリアしただけでは、最高難易度HELLに突入してもあっさりとやられるだけ。宝箱などでのステータスアップやレベル上げは必須です。
アクションゲームとしてのやり込み要素にも凝った本作。興味のある方は購入してみてはいかがでしょうか。

あと、個人的にはアクション部分のドットアニメの質も高いので、何かしら鑑賞モードがあれば嬉しいなーと思ったり。

ドット絵とインディーズゲームシーンについて

余談として、ドット絵とインディーズゲームシーンについて、軽くお話しましょう。
ドット絵に関しても、インディーズゲームに関しても、定義が色々ありますがここで個人的な定義で書かせていただきます。
元々ドット絵という技術は、ハード面・ソフト面など様々な「制約」がある上で、いかにして美しく表現するかを追求したものでした。
小さいキャンバスに、モニターに映した時の色の滲み・干渉まで計算を行う職人技。
3Dゲームの隆盛やハード性能の向上に伴って衰退したように思えましたが、3Dモデルのテクスチャや、携帯電話(スマホ含む)のゲームで重宝されたり、商業ゲームでも何だかんだで重宝されています。

ドット絵の強みとしては、
・デフォルメキャラの場合、プレイヤーが脳内である程度補完してくれる
・ノスタルジックな雰囲気を演出できる
・逆に、昔からの技法で新しい作品を作ることでの一種の芸術性の表現ができる
・昔からの技術なのでノウハウがたまっている
・ドット絵ならではの温かい雰囲気を演出できる

可能な限り、情報を削りに削りながらも魅せる芸術。それがドット絵だと私は考えます。
凄く個人的な話なんですが、ゲームのキャラに乳首を描こうとして恐ろしく悩んだことがあります。
複数ドットを使うと乳輪がやたらとデカくなってしまいますしかと言って、安直な1ドットだと乳房との色合わせが難しい。
1ドットを加えるどころか、1ドット色を失敗しただけでもバランスが崩れる、そんな繊細な表現がそこにはあるのです。
(安易なアンチエイリアシングを行ったりすると、スマホ版クロノトリガーのようなものが生まれたりも)

個人的には、ウォーザード(1995年・カプコン)のドット絵がとても好きなのですが、いかんせん「ドットアニメとして動かす」となるとコストがかかってしまいます。
例えば、GUILTY GEAR X(2000年・アークシステムワークス)はアニメーターの原画、BLAZBUEシリーズ(アークシステムワークス)や、KOF12・13(SNK)では3Dモデルから、それぞれドット絵に落とし込む作業を行っていたりします。
そんなわけで、コストの問題で「フルプライスかつドットアニメ重視のゲーム」というのは商業では非常に少なくなりました。

その一方で、2000年代のお話ですが、音楽にとっての「チップチューン」と同じように、先に挙げた「古い技術で新しいドットアニメを作る」ことの評価が高まる気運がありました。
特にインディーズゲーム(同人や小規模なスタジオ)界隈に関してはその流れが強く、Steamで配信されている人気作品の中にも、多くドット絵を使った作品を見ることが出来ます。
パソコンゲームでは「ハードによる制限」はほとんどありませんが、ドット絵でゲームを作ることが上手く扱えば「コストの制限」に繋がることも忘れてはなりません。

前回感想を書かせていただいた「プリンちゃんのボクシングジム2」や、Steamアワードを2つ受賞したフルアニメーションACT「Cuphead」のような作品は、製作期間が長引きますし売れなかったら大惨事です。
その点、デフォルメなどのドット絵などを利用すれば、「一定水準のグラフィックを保ちつつ新しいゲーム性を持つ作品を、低リスクで発表できる」という強みが出てきます。

エロ同人に関しましては、いかにもなレトロゲーム的な「F.F.A」から、「だらしないクラスメートとまいにちHライフ」のような「ドット絵を使った新しい表現への挑戦」のものまで、多数存在しています。
ことアクションゲームにおいては、遊びやすさのためにキャラサイズを小さくする関係で、ただでさえ高いクオリティのエロドットが、「プレイヤーの脳内補完」の作用でよりエロさが際立つ例もあると考えます。
先述した通り、ドット絵は職人技。液晶などでクッキリ見える昨今だからこそ、余計に「1ドットに対してどう向き合ったか」が分かるところでしょう。
「無駄を極力排除した芸術」とも言えるドットアニメ。淫らな動きにふけりながらも、作者が1ドットに込めた思いを読み取ってみるのも面白いことでしょう。